林業・木材講座17 落雷

 落雷によって樹木が被害を受けることはよく知られている。 被害を受けるのは、広い場所にある孤立木か、公園や神社にある樹高のひと際高い巨木であることが多い。
 雷による被害であることは、人里近くであれば、住民が落雷する現場を見ているか、雷鳴と樹木の異常発生の時から推定される。 一方、人里離れた所にある樹木の場合には、針葉が茶色に変わってから発見されることも少なくない。
 落雷による被害木は、以下に述べる特有の症状により見分けることが出来る。

① 幹の折損(写真1)
 落雷の衝撃によって幹の組織が破壊されるもので、先端部、中間部あるいは下部でも発生する。 公園や神社の孤立した樹齢の高い巨木に多い。幹全体が粉砕することもあるという。

② 幹割れ(写真2、4、5)
 雷による被害木に共通して見られる症状である。 高圧電流による高熱で幹内部の水分が急激に膨張して幹が割れるもので、これに伴って樹皮が剥れることもある。 割れ目の長さは、数10cmから幹全体に及ぶものなど様々である。

③ 幹内部の燃え・焦げ
 幹の根元にある空洞に火が付くもので、空洞内部の表面が焼け焦げになる。 芯腐れがある巨木に発生する。

 以上は、単木的な被害の場合であるが、林の中に落雷して、周辺の樹木が集団で枯れる被害も見られる。
 図1は、岩手県洋野町種市のアカマツ林の被害事例である。
 集団の中心部の幹割れの見られる木を中心に約30mの範囲の樹木が枯れていた。 さらにその周辺には中心部側の枝のみの針葉が枯れたもの(写真3)が観察された。
 この例は、中心部の幹割れのある木に落雷し、その影響で周辺の木も枯れたものと推定された。 (岩手県林業技術センター調査データ)
 
集団枯れ被害木の配置

図1 集団枯れの被害木の配置
幹折れと幹割れ
写真1 幹折れと幹割れ
(ウィキペディアから)
幹割れ(サワラ)
写真2 幹割れ(サワラ)
(栃木県大田原市HPから)
集団枯れ被害
写真3 集団枯れ被害(図1)
周辺部では中心部側の枝のみ枯損
  
幹割れと樹皮剥離(アカマツ)
写真4 幹割れと樹皮剥離
(アカマツ)
幹割れ(クロマツ)
写真5 幹割れ(クロマツ)
(図・写真提供:佐藤平典氏 無断転載を禁じます)